※作成中(以下は、過去にnotebooklmで自作したフリーランス法質問botから抽出した内容です)。
はじめに:フリーランス法の目的と適用対象
令和5年に公布された「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス法)は、我が国における働き方の多様化の進展に鑑み、個人が事業者として受託した業務に安定的に従事できる環境を整備することを目的としています。本法は、発注事業者に対し、「取引の適正化」と「就業環境の整備」という2つの側面から、特定の義務と禁止行為を課します。
契約書を作成するにあたり、まず、自社(発注事業者)と相手方(フリーランス)が本法の対象となるか、取引がどのような種類に該当するかを確認することが不可欠です。
1.法の適用を受ける事業者の定義
本法における「特定受託事業者」(いわゆるフリーランス)とは、以下のいずれかに該当する業務委託の相手方である事業者を指します。
従業員を使用しない個人。
一の代表者以外に他の役員がなく、かつ、従業員を使用しない法人。
なお、「従業員を使用」するとは、原則として1週間の所定労働時間が20時間以上かつ継続して31日以上雇用される労働者を雇用することをいいます。
また、発注事業者には以下の2種類があり、特に「特定業務委託事業者」にはより厳格な義務が課されます。
業務委託事業者:特定受託事業者に業務委託をする事業者(従業員の有無は問わない)。
特定業務委託事業者:業務委託事業者のうち、従業員を使用する個人、または役員が2人以上いるか従業員を使用する法人。
本法の対象となる「業務委託」は、物品の製造・加工、情報成果物(プログラム、映像、文字・図形等)の作成、または役務の提供(運送、コンサルタント、営業等)の委託を指し、業種や業界の限定はありません。
2.全ての業務委託事業者に課される義務:取引条件の明示
すべての業務委託事業者(特定業務委託事業者を含む)は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合、直ちに、公正取引委員会規則で定める事項を、書面または電磁的方法により明示しなければなりません。
明示が必須な事項(全11項目)
契約書または契約内容を特定する書類に、以下の事項を明確に記載する必要があります。
- 業務委託事業者および特定受託事業者の名称等(識別できる符号も可)。
- 業務委託をした日(合意した日)。
- 特定受託事業者の給付(役務を含む)の内容(品目、数量、規格、仕様等を明確に記載)。
- 給付を受領、または役務の提供を受ける期日(期間を定める場合はその期間)。
- 給付を受領、または役務の提供を受ける場所。
- 給付の内容について検査をする場合は、その検査を完了する期日。
- 報酬の額および支払期日。
報酬の額:具体的な金額が困難な正当な理由がある場合は、具体的な金額を定めることとなる算定方法を明示することが認められます。この算定方法は、算定根拠が確定すれば自動的に金額が確定するものでなければなりません。
支払期日:具体的な日を特定する必要があります(例:「翌月末日」は可、「翌月●日まで」は不可)。 - 報酬の全部または一部の支払につき、手形、一括決済方式、電子記録債権、または資金移動を用いる場合の各必要事項。
未定事項の取り扱い
上記明示事項のうち、内容が定められないことにつき正当な理由があるもの(未定事項)については、当初の明示を要しません。この場合、業務委託をした時点で、未定事項以外の事項に加え、未定事項の内容が定められない理由と予定期日を明示する必要があります。内容が定まった後は、直ちに、当該事項を補充的に明示しなければなりません。
電磁的方法による明示と書面交付請求
電磁的方法(電子メール、SNSメッセージ機能など)で明示した場合でも、特定受託事業者から書面の交付を求められたときは、遅滞なく、書面を交付する必要があります。ただし、フリーランスの保護に支障がない特定の例外的な場合(例:フリーランスが電磁的方法による提供を求めた場合や、インターネット上での定型約款による契約で閲覧可能な状態にある場合)は除かれます。
3.特定業務委託事業者に課される義務と禁止行為
従業員を使用する等、一定規模以上の発注事業者(特定業務委託事業者)には、報酬の支払期日に関する特則と、7つの禁止行為が適用されます。
報酬の支払期日に関する特則
特定業務委託事業者が業務委託をした場合、報酬の支払期日は、給付を受領した日(役務提供を受けた日)から起算して60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内に定められなければなりません。
再委託の場合の例外
元委託者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が再委託をする場合、一定の事項を明示すれば、報酬の支払期日は、元委託支払期日から起算して30日以内の期間内で、かつ、できる限り短い期間内に定めることができます。この場合、元委託者から前払金の支払いを受けたときは、特定業務委託事業者は、フリーランスに対し、業務着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければなりません。
1か月以上の業務委託における7つの禁止行為
特定業務委託事業者が、政令で定める期間(1か月)以上の期間行う業務委託(契約の更新を含む)をした場合、以下の行為は禁止されます。たとえ特定受託事業者の了解や合意があっても、違反行為となる場合があるため、特に注意が必要です。
- 受領拒否の禁止:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の受領を拒むこと(物品・情報成果物のみ)。
- 報酬の減額の禁止:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、報酬の額を減ずること。振込手数料を合意なく差し引く行為も該当します。
- 返品の禁止:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付を受領した後に引き取らせること(物品・情報成果物のみ)。
- 買いたたきの禁止:通常支払われる対価に比し著しく低い報酬の額を不当に定めること。
- 購入・利用強制の禁止:正当な理由なく、自己の指定する物や役務を強制して購入・利用させること。
- 不当な経済上の利益の提供要請の禁止:自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させることによって、特定受託事業者の利益を不当に害すること。
- 不当な給付内容の変更及び不当なやり直しの禁止:特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに、給付の内容を変更させたり、受領後にやり直させたりすることによって、特定受託事業者の利益を不当に害すること。発注側の都合による業務委託の取り消しで、特定受託事業者が要した費用を負担しない場合も該当します。
4.就業環境の整備に関する義務(特定業務委託事業者向け)
募集情報の的確な表示義務
特定業務委託事業者は、広告等によりフリーランスを募集する際、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはならず、情報を正確かつ最新の内容に保つ義務があります。
政令で定める事項(業務の内容、場所・期間・時間、報酬、契約の解除、募集を行う者に関する事項)について、明示が必要です。1対1の交渉でなく、2人以上の複数の相手に打診する場合は募集情報表示義務の対象に含まれます。
育児介護等への配慮義務
政令で定める期間(6か月)以上の継続的業務委託を行う特定業務委託事業者は、特定受託事業者からの申出に応じて、育児や介護(育児介護等)と業務を両立できるよう、その状況に応じた必要な配慮をしなければなりません。継続的業務委託以外の業務委託については、配慮するよう努めなければならない(努力義務)とされています。
ハラスメント対策に係る体制整備義務
特定業務委託事業者は、性的な言動(セクハラ)、妊娠・出産に関する言動(マタハラ)、および取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務遂行上必要かつ相当な範囲を超えたもの(パワハラ)により、特定受託業務従事者の就業環境が害されることのないよう、相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければなりません。相談したことを理由とする不利益な取り扱いも禁止されています。
解除等の事前予告・理由開示義務
継続的業務委託(6か月以上の期間、契約の更新を含む)に係る契約を解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む)しようとする特定業務委託事業者は、特定受託事業者に対し、少なくとも30日前までにその予告をしなければなりません。
また、予告がされた日から契約が満了する日までの間に、特定受託事業者が解除の理由の開示を請求した場合は、遅滞なく開示しなければなりません。ただし、災害その他やむを得ない事由がある場合や、特定受託事業者の責めに帰すべき事由により直ちに解除が必要な場合など、厚生労働省令で定める場合は予告義務の例外となります。
まとめ
フリーランス法は、フリーランスとの取引における透明性と公正性を確保するための重要な法的基盤です。契約書を作成する弁護士としては、これらの義務規定と禁止行為を深く理解し、特に「明示義務」の履行徹底、報酬支払期日の厳守、およびハラスメント対策を含む就業環境の整備について、依頼者が確実に遵守できるよう助言することが求められます。
これらの規定を遵守することは、コンプライアンス上のリスクを回避するだけでなく、発注者とフリーランスとの信頼関係を構築し、長期的な事業の健全な発展に寄与するものです。

